「誰のためのデザイン」という本があります。
デザイン系に少しでも興味があればぜひ読んでほしい名著です。
「誰のためのデザイン」、僕が過ごした大学では必ず読むように指導されました。
今思い起こしても、デザインがいいとはなにか、という問題に対して1つの回答が書かれていると思います。
ただ、そのぶん、中古本でも高い…。
図書館でもおいてるかもしれないのですが
「そもそも良いデザインってなに?」
という回答を書いてみたいと思います。
(内容は工業デザイン側から見たものです)
デザインとはそもそも設計のこと
「デザイン」は、日本語だと 「なんかかっこいいモノを作る」 という文脈で用いられます。
実は日本語「デザイン」の文脈は英語の design からずれているといわれます。
英語のdesignは「要件を整理して、目的に応じたものとなるよう設計する」
という意味合いで使うことがおおいです。
(異論はあると思います)
整理して設計する、これが当初のdesignでした。
いいデザインとは 「かんたんに目的を達成させるもの」
そこでdesignの意味から見た「見かけばかりでない設計」を考えてみます。
たとえばハサミがあります。
そして、ハサミという道具を、何も知らない人間に与えてみましょう。
使い方を説明せずとも、ハサミにゆびを入れるでしょう。
そして指を動かすと、刃先が動くことが分かります。
刃先が動くということは、なにかを切断するための道具だ、とすぐ認識できるでしょう。
つまり、ハサミは 「見ただけで触っただけで、説明がなくとも、使い方がわかる」 ものなのです。
「誰のためのデザイン」では一つの目標とされている概念です。
格好良すぎて使い方のわからないハサミがあるとすれば、
それはもはやハサミではないかもしれません。
いいデザインは間違いを起こさせない
「どうすれば最小限の説明で伝わるか」
「どうすれば目的に近づくことができるか」
designの基本はこの点だと思います。
なんとなく使っていればわかる、直感的に分かる、目的を達成できる。
そのあたりがdesignの目的です。
Macintoshが画期的だといわれ、iPhoneが受け入れられたのも
マニュアルはないけれども触るとなんとなく使い方は分かる
という点が大きいのです。
(そもそも論に、分厚いマニュアルを全部読み把握するほどみんな暇なのか?という話もあるのですが)
そして、人間は思った通りに動かないものには苛立ちを覚えます。
「思うように動かない」デザインは使う気を失わせるのです。
「間違いやすい」のは、操作している人の問題ではなく
・ 「間違いやすいdesignになっているから」
・ 「間違ったらリカバリーが難しいから」
といった、作った側の問題なのです。
(このあたりのガイドラインも業界によってはあります)
もちろんかっこいいデザインもあるよ
工業系やコンピュータ系のデザインは
「いかにストレスなく思い通りに操作させるか」
が長年のテーマでした。
ときとして見栄えよりも優先させるべき課題とされます。
例えば、Windowsのかつての標準フォント「MSゴシック」は美しさはなくても「小さい画面で読めること」を目指したフォントです。
その目的はmacで使われた美しいヒラギノフォントと根本から違うのです。
コンピューターの画面が大きくなり、たしかにMSゴシックはWindowsからも減りました。
ただ、組み込み機材や小型液晶では、いまもMSゴシックに似たフォントが使われています。
コピー機や券売機の液晶、一昔前の携帯電話を思い出してみてください。
MSゴシックのようなフォントが多く使われています。
これらに、もしも外見だけでフォントを選べば、読みづらく操作しづらい、わかりづらい機器といわれかねません。
そして、機会損失や、「あの機械は使いづらいからもう嫌だ」というイメージ悪化につながってしまうのです。
いっぽう、グラフィック、とくに広告系のデザインは必ずしもそうではありません。
グラフィックに求められるデザインは、広告が中心ということもあり
「目立つこと」
「売れること」
「イメージをアップさせること」
を前提にしている場合が多いです。というか大半そうだと思います。
だからグラフィックデザインで
「よくわからないけど、なんとなくかっこいい」
は生まれやすい土壌があります。
デザインといっても「よくわからないけど、かっこいい」が必ずしも正解ではないし、
「かっこいいから、***のように作って」はあなたの求める目的とそぐわないかもしれません。
ご注意くださいませ。